介護医療院や老健施設、大規模災害に備え非常用発電機や燃料、飲食料の備蓄状況など点検―厚労省

 介護医療院や介護老人保健施設など、高齢者・障害者・児童の利用者・入所者のいる社会福祉施設において、大規模災害によって停電や断水などが生じても「最低3日以上、業務が継続できる」よう、非常用発電機や燃料、飲料・食料などが備蓄されているかを点検し、必要な対策を行ってほしい―。

 厚生労働省は10月19日に、事務連絡「社会福祉施設等における災害時に備えたライフライン等の点検について」を発出し、このように依頼しました。

高齢者、障害者、児童施設などで、最低3日以上の業務継続を念頭においた対策を

 昨今、我が国では非常に多くの災害が発生しています。その際、大規模な▼停電▼断水▼食料不足—などが発生し、「ライフライン等の確保」が非常に重要な課題であることが再認識されました。

 とくに高齢者、障害児者等の日常生活上の支援が必要な利用者・入所者の多い社会福祉施設においては、ライフライン等が長期間寸断され、サービス提供の困難となれば、利用者・入所者の生命・身体に著しい影響を及ぼしかねません。今般、厚労省は都道府県等に宛てて、「社会福祉施設等が、▼停電▼断水▼食料不足—などに、どのような対応策を講じているのか」を調べ、その結果をもとに必要な支援を行うことを要請したものです。

対象となる施設は、高齢者関係では▼老人短期入所施設▼特別養護老人ホーム▼認知症対応型共同生活介護事業所(認知症高齢者グループホーム)▼介護老人保健施設▼介護医療院▼小規模多機能型居宅介護事業所▼看護小規模多機能型居宅介護事業所▼サービス付高齢者向け住宅—など、障害児者関係では▼障害者支援施設▼福祉型障害児入所施設▼医療型障害児入所施設▼共同生活援助事業所(グループホーム)—など、児童関係では▼助産施設▼乳児院▼母子生活支援施設▼児童養護施設▼婦人保護施設—などです。

また、具体的に点検しなければならないのは、例えば次のような事項です。南海トラフ地震の想定地域など、特段の対応が求められる場合を除き、「最低限3日間以上は業務が継続できる」ようにするとの視点に立って点検することが必要となります。

【停電への備え】

▽非常用自家発電機がある場合、▼燃料の備蓄▼緊急時の燃料確保策(24時間営業のガソリンスタンド等の確認や、燃料供給業者等との優先供給協定など)—を講じているか、定期的な検査を実施しているか、緊急時に使用できるよう性能把握や訓練をしているか

▽非常用自家発電機がない場合、医療的配慮が必要な入所者(人工呼吸器、酸素療法、喀痰吸引など)がいるか、非常用自家発電機の導入(レンタルも含めて)などを検討しているか

▽照明確保のため、十分な数の懐中電灯やランタン等を備蓄しているか

▽防寒のため、▼石油(灯油)ストーブ等の代替暖房器具とその燃料▼毛布▼携帯用カイロ▼防寒具—などを備蓄しているか

▽医療機器等の予備バッテリー、充電式・手動式の喀痰吸引器などを準備しているか

▽人工透析患者に係る緊急時の対応、ニーズ、必要物資等を把握し、自治体の透析担当者や各透析施設などと連携体制を確保しているか。

【断水への備え】

▽生活用水について、▼近隣の給水場を確認し、大容量ポリタンク等の給水容器の準備をしているか▼酒造会社などの災害時協力井戸を確保しているか▼地下水(井戸水)利用―を検討しているか

▽飲料水の備蓄をしているか(近隣被災者等の受け入れが求められ、その分の飲料水、食料提供が必要な場合もあることを想定しておく必要がある)

▽携帯トイレや簡易トイレ、オムツなどを備蓄しているか

【ガス停止への備え】

▽多めのカセットコンロ・カセットガス等を備蓄しているか、レンタルを含めたプロパンガスの導入・備蓄をしているか

▽熱調理不要な食料(ゼリータイプの高カロリー食等)を備蓄しているか

【通信停止への備え】

▽携帯電話充電器、乾電池等など「通信手段のバッテリー」を確保しているか

▽複数の通信手段(携帯電話メール、公衆電話、災害用トランシーバー、衛星電話等)を確保しているか

【物資の備蓄状況】

▼食料▼飲料水▼生活必需品▼医薬品▼衛生用品▼情報機器▼防寒具▼非常用具▼冷暖房設備・空調設備稼働用の燃料—について、「季節ごとの1日の必要量」を把握しているか

 
 このほかにも、「利用者の避難方法」「緊急時の職員間の連絡体制」などを含めて、BCP(事業継続計画)として文書で整理し、役職員間で共有しておくことや、さらにBCPに沿った訓練等を実践しておくことも重要です。大規模な自然災害はいつ発生するかわからず、早急な点検と迅速な対策が必要と言えるでしょう。