大阪ビル火災 なぜこれほどの惨事になった

2021/12/18 読売新聞オンラインより

 不特定多数の人が出入りする繁華街の雑居ビルで一体何が起きたのか。警察と消防は、ビルの防火体制を含めて、全容を解明せねばならない。

 大阪市北区の8階建てビルで2021年12月17日午前10時過ぎ、4階に入る心療内科クリニックから出火した。約80平方メートルのうち25平方メートルを焼き、約30分でほぼ消し止められた。

 この火事で、4階にいた多くの男女が心肺停止状態で病院に搬送され、亡くなった。警察は現場の状況から、放火の疑いがあるとみて捜査している。

 クリニックに来た男が、持参した紙袋を蹴り倒し、流れ出た液体から火が出たとの情報もある。被害はあまりに甚大だ。故意に火を放ったのなら許しがたい。

 亡くなった人らは全員4階から運び出された。クリニックの診療は午前10時からで、開始直後に火災が発生したとみられる。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、心身の不調を訴えて心療内科を訪れる人は多いとされる。被害者の中にも、クリニックに救いを求めて、朝から足を運んだ人がいたのだろうか。

 火の強くなるスピードが異常に速く、4階の窓枠全体が炎でオレンジ色になって黒煙が屋上まで上っていたとの目撃証言がある。

 専門家からは「初期消火できなければ、10分程度で部屋全体が高温になる。雑居ビルは窓が少ないため、空気が十分に供給されず、一酸化炭素中毒になった可能性がある」との指摘も出ている。

 焼失面積25平方メートル、鎮圧まで30分ほどの火災で、なぜこれほど大きな被害が出たのか。その点の解明も重要になるだろう。

 雑居ビルでは過去にも多くの死傷者が出る火災が起きている。

 2001年には、東京都新宿区歌舞伎町の5階建てのビル火災で、客や従業員ら計44人が死亡した。08年には大阪市浪速区のビルにある個室ビデオ店が放火され、客16人が亡くなっている。

 歌舞伎町の火災をきっかけに、国は02年に消防法などを改正し、小規模雑居ビルについても自動火災報知設備の設置を義務化した。06年には、ビルの防火管理者に対し、5年ごとに安全対策の講習を受けるよう義務づけている。

 だが、全国的に法令違反のビルは後を絶たず、防火体制の不備が被害の拡大を招くことは多い。

 年末に向け、繁華街は人でにぎわい、雑居ビルで飲食をする人も増えるだろう。今回の火災を機に、各地の雑居ビルの点検を改めて強化すべきだ。

東日本大震災や、歌舞伎町の火災などで、同じ惨事を起こさない様に消防法が改正されていますが、中々守られずこのような事故は続いています。物件所有者の法を守る意識の向上、法の通り取り締まる行政の両輪が稼働しないといけないと考えます。