【介護施設のBCP対策】義務化はいつから?

「介護施設のBCP策定が義務化」されることになりました。

「義務化はいつから?」
「義務化の内容は?」
「従わないとどうなるの?」
「具体的にはどんなものを作るの?」

など、分からないことが多いという方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では「介護施設のBCP策定」に関して全体像も分かりやすく解説していきます。

ぜひ今後の BCP対策 に向けて、お役立てください。

BCP対策とは?BCMとは?

介護施設のBCP対策義務化の本題に入る前に、
まず基礎知識として「BCP対策」や「BCM」とは何か?確認しておきましょう。

BCP対策とは?

BCP とは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字から取った言葉です。

「事業継続計画」の名前の通り、
感染症や災害時などの緊急事態においても、事業を継続させるために
予め立てておく「計画」のことです。

例えば・・・
・緊急時の責任者や連絡網の整備
・感染症拡大で不足する可能性のある消毒液等を備蓄しておく
・停電に対して、非常用電源を導入しておく
・感染症拡大で人員不足になった場合に備えて、予め外部人員確保の約束をしておく
・・・等

このように様々なことを想定して「計画」しておきます。

「防災」との違い

災害に備えるというと「防災」が浮かぶと思います。
防災」と「BCP」は非常によく似ていますが、

防災は「人命や建物を守るためのもの」であるのに対して、
BCP対策 は「人命や建物を守る事に加えて『事業継続』も含めた対策」
と考えると分かりやすいです。

BCMとは?

BCP と似た言葉では「BCM」という言葉もあります。

BCMとは「BCP を運用/マネジメントすること」です。
事業継続マネジメント(Business Continuity Management)の頭文字からそう名付けられています。

BCP は「計画」です。
しかし計画しただけで、実際に緊急事態に対応できません。

立てた「計画」がいざという時にしっかり実行できるように、
BCP で定めた計画を施設全体に落とし込み、普段から訓練や教育を行う。
そして定期的に見直しし、新しい知識や災害への対策を盛り込むことでより精度を上げて行くのが
BCM の役割です。

BCP対策 として計画を立てるだけでなく、
BCM」で実効性のあるものにしていくことが非常に重要です。

介護施設のBCP対策とBCMが義務化

そして、この「BCP対策」と「BCM」が介護施設において義務化されることになりました。

BCP対策だけでなく「BCM」も義務化

厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」には、下記のように定められています。

○業務継続に向けた取組の強化
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。
(※3年の経過措置期間を設ける)

引用元:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」

「業務継続に向けた計画等の策定(BCP対策)」を義務付けるされているだけでなく
「研修の実施、訓練の実施等」 BCM に対しても義務付けるとされている点も
注目しておくべきところです。

義務化はいつから?

上記の介護報酬改定にて、BCP対策/BCM は令和3年度(2021年)に定められましたが、
いずれも「3年の経過措置期間を設ける」とされているので、
2024年までに「運用も含めて」実施しておく必要があります。

そのため、2023年度までには BCP対策 を定め、
ある程度の運用実績を設けておく必要があります。

義務化に従わないとどうなる?

それでは、この義務化に従わない場合には、どのようなリスクがあるのでしょうか?

1.介護報酬が減算される
2.裁判で賠償を負う可能性がある
3.社会的責任を追及される可能性がある
4.BCMの不備で法的責任を問われる可能性も

1.介護報酬が減算される

令和3年度介護報酬改定では、介護報酬が0.70%上がる改定がされています。
その内、0.05%が、感染症対策への評価とされています。

つまり、BCP 策定や BCM を実施していなければ、介護報酬が減算されることになります。

2.裁判で賠償を負う可能性がある

義務化が定められている中で、BCP対策 や BCM を実施しておらず
入所者や職員の人命や健康に被害が及んだ場合、訴訟による賠償責任を負う可能性もあります。

3.社会的責任を追及される可能性がある

訴訟などだけでなく、報道などにより社会的責任を追及される可能性もあります。

4.BCMの不備で法的責任を問われることも

BCP 策定をしていても、BCM が実施されていなかったこと
法的責任を問われる判例も出ています。

日和幼稚園バス津波被災事件の例
 
東日本大震災において、災害対策マニュアルに従った非難を行わなかったことにより
園児5名が亡くなり、法的責任が争われた裁判です。
 
日和幼稚園は高台に位置しており、園の災害対策マニュアルでは「地震があった際には
津波の可能性を考えて、一旦園内に待機させる」という内容になっており、
この内容が園の実態をみると合理的でしたが、
 
実際にはこのマニュアルが周知されておらず、
保護者の元に送る判断をした結果、その途中で津波に遭い、園児5名が亡くなってしまいました。
 
裁判では、園児1人につき4000万円以上の損害賠償が認められています。
(最終的には、高裁にて和解により終結)

「日和幼稚園バス津波被災事件(仙台地裁平成25年9月17日判決)

BCP対策を行う3つのメリット

反対に、BCP対策/BCM を行うことで得られるメリットを見て行きましょう。

メリット1.入居者・職員の生命と事業を守ることが出来る
メリット2.税制優遇が受けられる
メリット3.ワクチンの優先接種が受けられる

メリット1.入居者・職員の生命と事業を守ることが出来る

BCP対策を策定し、BCMを実施して実効性のあるものにしておくことは、
入居者・職員の生命と事業を守ることに繋がります。

メリット2.税制優遇が受けられる

「業継続力強化計画の認定制度」による税制優遇を受けることができます。
(税制優遇については、後半に詳しく解説します)

メリット3.ワクチンの優先接種が受けられる

BCP対策を行っている介護事業者は、感染拡大時にワクチンの優先接種を受けることが出来ます。

(特定接種)
第二十八条
政府対策本部長は、医療の提供並びに国民生活及び国民経済の安定を確保するため緊急の必要があると認めるときは、厚生労働大臣に対し、次に掲げる措置を講ずるよう指示することができる。
 
一 医療の提供の業務又は国民生活及び国民経済の安定に寄与する業務を行う事業者であって厚生労働大臣の定めるところにより厚生労働大臣の登録を受けているもの(第三項及び第四項において「登録事業者」という。)のこれらの業務に従事する者(厚生労働大臣の定める基準に該当する者に限る。)並びに新型インフルエンザ等対策の実施に携わる国家公務員に対し、臨時に予防接種を行うこと。

引用元:「新型インフルエンザ等対策特別措置法(令和三年四月一日施行)」

この条文の中にある「登録事業者」は、下記条件を満たすことでなれます。

1.登録対象の業種であること
2.産業医を選任していること
3.BCP対策を行っていること

介護事業は登録対象の業種であり、産業医の選任は不要とされていますので、
BCP対策を行っていることが、ワクチンの優先接種対象となる条件になっています。

介護事業者のBCP対策の特徴

BCP対策は、さまざまな業種で策定されています。
ここでは、介護事業のBCP対策の特徴について解説して行きます。

[topics]
・介護施設への脅威
・介護施設のBCP対策の他業種との違い
・介護施設のBCP対策の基本的な考え方
・感染症と自然災害2つのBCP対策

介護施設への脅威

感染症の拡大に加え、自然災害のリスクも近年高まっています。
さらにその両方が重なる「感染拡大時の自然災害被災」のリスクもあります。

「感染症」による介護施設へのリスクの特徴

新型コロナウィルスやインフルエンザは、介護施設の入所者でもある
お年寄りや疾患のある方が特に重症化しやすく、生命の危険も大きくなります。

「自然災害」による介護施設へのリスクの特徴

自然災害時にも、若い人や健康な人に比べて
避難が難しい面があり、また停電によって医療機器が停止すると直接生命の危険に繋がります。

感染症拡大でも自然災害でも「生命の危険に直接関わる」リスクが高い

このように、一般的な事業に比べて
「感染症」に対しても「自然災害」に対しても
介護施設には「生命の危険に直接関わる」リスクが高いと言えます。

介護施設のBCP対策の他業種との違い

つまり介護施設のBCP対策の他業種との大きな違いは、下記のようになります。

・介護施設のBCP対策は「生命の危険に直接関わる」
・要介護者やそのご家族にとって、生活するうえで欠かせない事業である

一般的な事業に比べて「事業を維持して行く責任が重い」とも言えるのです。

介護施設のBCP対策の基本的な考え方

介護施設のBCP対策を考える上では、下記のような観点を持つ必要があります。

まず、「介護サービスを中断させない」
それでも中断せざるを得なくなった場合には「速やかに復旧させる」
2段構えの対策で、それぞれ予め対策を考えておく必要があります。

1.介護サービスを中断させない

自然災害や感染症蔓延が起こった際にも、
介護サービスを中断させないように予め備えておく必要があります。

必要な資源を守る

介護サービスを中断させないためには、介護サービスに必要な資源を守る必要があります。

[介護サービスに必要な資源]
・職員
・建物
・資材
・ライフライン(電気・ガス・水道) 等

上記のような資源をいかにして守るかを BCP で定めておきます。
   

2.中断した場合は速やかに復旧させる

それでも中断せざるを得ない場合、速やかに復旧させることも重要です。

資源を補う

・職員が不足する場合には、外部に追加の職員を依頼する
・停電した場合には、非常用電源を使用する

上記のような対応で、不足した資源を補います。
 

重要業務を優先して取り組む

職員の不足やライフラインの途絶などで、通常通りの業務を行うのが困難な場合
「重要業務を絞り込み、優先して取り組む」ことで対応します。